慢性腎不全の場合、合併症の一つに「胃潰瘍」があります。
我が家の腎不全犬チロルも、腎不全と診断された時に「胃薬」は継続して飲んだ方が良いという説明がありました。
体内の窒素代謝物を減らして、アンモニアの濃度が高くならないように意識はしていたけれど。
2018年7月に腎不全と診断され、あれよあれよという間に、食欲がなくなりみるみる痩せていったチロル。2018年9月には尿毒症の症状に末期の状態になっているのかと、頭が真っ白になりました。https://beloved-sheltie.com/2018/12/06/nyodokushou/ その際に先生から、尿毒症対策として「アゾディル」というサプリのお話を聞き、サンプルをいただきました。あれから6か月が経ちました。少しでも尿毒症の症状が軽減できれば良いと思い継続しています。 アゾディルは乳酸菌サプリメントメーカーサイトによると、全米シェアN... 犬(16歳)の腎不全で尿毒症の対策に「アゾディル」継続しています - いとしのシェルティ *Sheltie Angels* |
やはり潰瘍などの消化管出血は心配なので、動物病院で処方された「胃薬」を飲んでいました。
しばらく服用してから調べてみると、この処方された「胃薬」が腎排泄型のものという事がわかりました。
腎臓に働いてもらって薬物代謝をしてもらうわけです。
それでなくても機能低下し疲労困憊している腎臓に、さらに負担をかける事に。
合併症の胃潰瘍対策は必要だとは思うけれど、腎臓の負担をこれ以上増やしたくないので、我が家の腎不全犬チロルは「胃薬」を変更して対応しました。
目次
動物病院で処方された「ファモチジンOD錠10mg」
このファモチジンOD錠は「ヒスタミンH2受容体拮抗薬」という薬で、胃壁の細胞の中にあるヒスタミンH2受容体を遮断(ブロック)する事により、胃酸の分泌を抑える薬です。
H2ブロッカーと呼ばれたりします。
「OD錠」は口腔崩壊錠という意味で、口の中で唾液によってラムネ菓子のように溶けていく錠剤。
「ガスター」という薬の後発品がファモチジンで、「ガスター」も「ファモチジン」も商品名は違うけれど同じ薬です。
例えば・・・
先発品 | 後発品 |
ガスター | ファモチジン |
ザンタック | ラニチジン |
プロテカジン | ラフチジン |
アシノン | ニザチジン |
これらはヒスタミンH2受容体拮抗薬ですが、この中でプロテカジン・ラフチジンのみが肝代謝型(肝臓が薬物代謝を行う)で、それ以外は全て腎排泄型の薬のため、腎臓に薬物代謝の仕事をしてもらわないといけません。
つまり、慢性腎不全のように腎機能が低下している場合は、その腎機能に応じた容量調節が必要になるとされています。
日本腎臓病薬物療法学会のサイトにある、腎機能低下時に最も注意が必要な薬剤投与量一覧の中にも「ファモチジン」の記載がありました。
PDFファイルのNo.66です。
fa-file-pdf-o腎機能低下時に最も注意が必要な薬剤投与量一覧
レバミピド錠(胃潰瘍治療薬)へ変更
私の靱帯損傷の膝痛で整形外科から処方される痛み止めと一緒に出される胃薬。
湿布をメインで使っていたため、大量に残っていたレバミピド。
このレバミピド錠は、「粘液産生・分泌促進薬」という種類の薬です。
フリーラジカルの抑制作用も持っている薬なので、電子を奪われる事による細胞の損傷(酸化)に対する効果も期待できるかなと思いました。
先発品:ムコスタ→後発品:レバミピドという関係で、その昔、勉強会でムコスタについて「胃粘液=ムチンを増やす効果」と聞いてから、
「ムコスタ(=レバミピド)→ムチン→長芋(ネバネバ食材)」という公式が頭の中にありました。
こちらも腎排泄型に分類されるようですが、直接胃粘膜に作用するため薬の量を減らしたりする必要がないそうなので、自宅に大量に残っているものを持参して、動物病院の先生に変更可能か相談してみました。
特に問題はないと事で、体重が10㎏のシェルティーで1日1回 1錠を夕食と一緒に服用していました。
胃薬ではあるけれど、それぞれ作用の仕方が違う
大きなくくりで「胃の薬」と言っても、いろいろな種類があります。
今回チロルが服用した2種類の胃の薬の違いは、簡単に言うと以下のとおり。
腎不全の合併症の胃潰瘍について(人間の場合の)研究報告などを調べてみると、「慢性腎不全の場合、過酸症(胃酸の分泌が多い)により胃潰瘍の危険性がある事に留意する。」というような記述もあり、その点を踏まえると動物病院で処方されるファモチジンなどのH2ブロッカーの方が効能としては合っているのだなと思いました。
胃の粘液が少なくて、胃酸により胃潰瘍を発症してしまうような場合に胃の粘液を増やすレバミピドとは作用の仕方が違います。
胃薬としては「レバミピド錠」を選択
ファモチジンとレバミピドのどちらを腎不全の胃潰瘍(または消化管出血)対策に服用するかずいぶんと悩みました。
結局、「レバミピド」を選択。
- 副作用が少なく安全性の高い薬と言われていること
- フリーラジカル抑制作用があること
- 自宅に大量に残っていること
腎不全犬のチロルには、胃潰瘍対策として薬膳を参考に長芋やオクラのネバネバ食材をご飯に入れていたので、ムチンを増やす効果が期待できる「レバミピド」の方がチロルには合っているのではないかなと感じました。
レバミピドは効果もやんわりしていて、H2ブロッカー(胃酸の分泌を抑える薬)のような劇的な改善作用はないけれど、ムチンを増やしフリーラジカル抑制作用があるレバミピドを最後まで服用していました。
さいごに
研究報告にあるように、「慢性腎不全の場合の高ガストリン血症による過酸症→胃潰瘍」という経緯だとすれば、やはり胃酸の分泌を抑えるH2ブロッカーの方が効果があると考えられます。
今考えると、尿毒症の症状が出現した時にH2ブロッカーの肝代謝型「ラフチジン」の服用を検討してみれば良かったなぁと思っています。
今、腎不全犬と一緒に暮らしている方で、胃潰瘍(消化管出血)対策として「胃薬」が処方されている場合。
腎臓に負担のかからない「ラフチジン」の服用を検討するのも選択肢の一つかなと思います。
たかが胃薬ですが、機能の低下した腎臓は「なるべくなら腎排泄型はさけて欲しいなぁ」と訴えているような気がします。