悲しみは、時間が癒すと良く言うけれど。
悲しみの行程を知ることでも、癒される効果があるかもしれません。
「グリーフケア」という言葉を聞いたことがありますか?
大事な人を亡くした際に感じる悲しみ(グリーフ)をケアすること。
以前働いていた総合病院で聞いてみたけれど、実際に現場で働いているスタッフですら「何それ?」という人が多くて認知度の低さに驚きました。
また、あるベテランのスタッフは「グリーフケア」自体は知っているけれど、それは死別後の遺族に対する支援だから病院側で行うものではない、と言っていました。
遺族に対してお話を聞く(傾聴)などのボランティアの事を言っているのだろうけれど、私個人としては「グリーフケア」は、もうすぐ看取りを行うという終末期の時点から必要なのではないかな?と考えています。
家族として長年一緒に生活してきた愛犬を看取ったときも同じ。
大事な家族を亡くした悲しみ(グリーフ)から、ペットロスになるのは当たり前のこと。
今日はグリーフケアのことを書いておこうと思います。
目次
悲しみ(グリーフ)の反応は普通のこと
悲しみのプロセスには、いくつかの行程があり、いろいろな研究がされているそうです。
以前、勉強会で聞いたのはグリーフケア12行程のプロセスのお話。
本来、悲しみの反応自体は正常なものなので、誰にでも起こりうる感情。
そして、この12行程は順番通りに進んで行くのではなく、前に戻ったり後ろを先に体験したり、行ったり来たりしながら何度も繰り返すこともあるそうです。
1つの行程を体験する時間(期間)は人それぞれで違うので、この行程は何日間~などと決めることは不可能。
ただ、このプロセスが長くなったり、無理に抑圧しようとすると「病気」という形で反応が起こることがあり、このケースは病的グリーフとして専門的な医師による医療の介入が必要となるそうです。
私はこのことを踏まえて、「悲しい・寂しい・ごめんね・・・」という感情を抑え込まずに、泣きたいときに大泣きしました。
4日間はこの状態でした。
悲しみ(グリーフ)の12段階
-
- 精神的なショック、麻痺状態
- 否認
- パニック
- 怒り
- 敵意
- 後悔・罪悪感
- 空想・幻想
- 孤独・抑鬱
- 無気力
- 受容
- 希望
- 立ち直る
①精神的なショック、麻痺状態 ②否認 ③パニック
大事な人や、大事な愛犬を失ったときの精神的なショックはとても大きいので、一時的に現実の感覚が麻痺したようになります。
何も手につかず、頭が真っ白で、目で見ている現実の情報が遮断されたような状態です。
この、情報が一時的に遮断されたような状態は、精神的なショックを和らげるために起こる本能的な防衛策。
一過性のものであれば心配はありません。
そして、死を否定する行程。
本当は生きているんじゃないか?またすぐに起きるんじゃないか?
そして、怖くてパニックになる行程。
まさに1日目はこの状態。
新しいカーペットクリーナーの剥離紙を剥がさずに、ずっとコロコロしていたり。
コップに水を入れたつもりが小鉢だったり。
洗い物をしようとして、一瞬食器洗いの洗剤がどれか分からなくなったり。
そうしているうちに、もしかしてチロルが目を覚ましているんじゃないかと思って、何度も確認したり。
いろんな感情がグルグルと沸き上がってきて、パニックのように泣いたり。
とにかく感情が大忙しで大変でした。
④怒り ⑤敵意
少しショックが収まってくると、悲しいという感情と共に、苦しみに対する怒りの感情が現れるそうです。
突然の別れなどで心の準備期間がなかった場合などに強く現れやすい感情で、加害者がいる場合は加害者に対する怒りが強くなります。
入院中に亡くなった場合などは、その怒りが医師や看護師に向かうこともあります。
また、なぜこんな目に・・・と運命や神様に対しての怒りということもあるそうです。
怒りの感情に気づいたとき、それを外に出さずに内側にしまい込んでしまうと、心身の健康を損なうこともあるので、怒りの感情も無理に抑え込まずに、上手に外に出すように心がけるようにします。
また、やり場のない感情は、 周りの人や亡くなった人、医療関係者に対する敵意となって現れることがあります。
今は、「医療ミスでは?」という不信感から医療関係者に向けられることが多いように思います。
本人の健康に対する不摂生などが原因の場合は「無責任だ。」と責めて、敵意が表れてくることもあるそうです。
いずれにしても、周りの人はグリーフの行程には、「怒り」「敵意」の表現があることを理解しておくことが必要となります。
ここを飛んで次の行程へ移行していきました。
⑥後悔・罪悪感 ⑦空想・幻想 ⑧孤独・抑鬱 ⑨無気力
悲しみのプロセスが進んでくると、後悔や自分を責める気持ちが現れ始めます。
こうすれば良かった、または逆に、こうしなければもっと元気で一緒に居られたかもしれないのに・・・と考えて後悔の気持ちが沸き上がってきます。
そして、まだ生きているかのように思い込み、実際にそのような行動をとります。
葬儀などを行って、やる事が一段落するころには、どうしようもない寂しさを感じるようになります。
やる事を行ってホッとする反面、気持ちは沈んでいて引きこもってしまったり、外に出て人に逢うのが煩わしく感じたり。
また、大事な人がいないという虚しさから、これからどうしたら良いのか分からなくなり、やる気をなくした状態に陥ります。
これらの状態は、グリーフの重要なプロセスなので誰もが通る行程。
でも、この時期が長く続くとやはり健康を損なうことになるので、周りの人は見守りつつも、この時期を早く乗り越えれるように援助する事が必要となります。
きっと今後も度々現れることになると思います。⑦空想・幻想は現在そうなのかも。
写真の前の器に、今まで通り朝・夕のご飯を入れたり。
「行ってきます」や「おやすみ」のオヤツをあげたり。
視界の隅に、チロルの得意げにピンっと立てた尻尾が見えた気がしたり。⑧の無気力は火葬が終わった後の翌日の日曜日がピークでした。
本当に力が入らなくて、何もできませんでした。
月曜日~仕事に行ったことや、ブログを記録していることでクリアしたような気がします。
⑩受容 ⑪希望 ⑫立ち直り
行程の後半では、つらい現実を受けとめようとする状態に移行していきます。
どんなにもがいても、戻ってこないというあきらめの感情と共に、この現実を受け入れていこうという行程。
そして、少しずつ笑えるようになって、健康的な日常を取り戻しつつある状態。
こうして最後の立ち直る行程へと移行していきます。
1週間くらいで⑩受容の行程に移行しています。まだ前のプロセスに戻ったりして、行ったり来たりだけど・・・ちょうど1週間目のころに、憧れているクリエイティブな友人たちに逢えて。
関心したり、感動したり、大笑いしたり。
⑪希望のプロセスもクリアできたな・・・と思いました。
悲しみ(グリーフ)が癒されるにはどれくらいの時間が必要か?
グリーフケアは、この行程を行ったり来たりしながら最短でも約1年は時間がかかると思った方が良いとの事でした。
けれど実際に今、喪失感を感じながら思うのは、1年では短すぎるのではないかな?という事。
きっとこの隙間風が吹くような感覚は、何年経っても感じると思うし、感じていたいと思う気持ちもあります。
今回のように大泣きしたりはしないと思うけれど、チクリと刺さるトリガーはこれからも目の前に現れると思うし。
今は気持ちのふり幅が大きいけれど・・・
今は身を委ねて、逆らわずにリラックスしよう。